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建築におけるシックハウス対策とは?

シックハウス対策(ふりがな: しっくはうすたいさく、英語: Sick House Syndrome Countermeasures、仏語: Mesures contre le Syndrome du Bâtiment Malade)とは、住宅や建物内の空気汚染による健康被害を防ぐための取り組みです。化学物質による室内空気汚染が原因で、頭痛やめまい、アレルギー症状などを引き起こす「シックハウス症候群」を防ぐため、建築材料の選定や換気設備の設置などの対策が行われます。特に、ホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物(VOC)の発生を抑えることが重要視されています。

シックハウス対策の基本的な役割

シックハウス対策は、住環境の安全性と快適性を確保するために必要不可欠です。住宅やオフィスなどの建物内における空気の質を管理し、健康被害を未然に防ぐことがその主な目的です。以下に、シックハウス対策の具体的な役割を説明します。

1. 室内空気質の改善:シックハウス対策では、室内の空気を汚染する原因となる化学物質の発生を抑制します。具体的には、ホルムアルデヒドやトルエン、キシレンなどの有害物質の放散を抑える建材を使用し、室内空気の質を高めます。これにより、住まいやオフィスでの生活や仕事の快適性と健康を守ります。

2. 換気システムの導入:建物内に新鮮な外気を取り入れ、室内の汚染物質を排出するために換気設備が設置されます。シックハウス対策では、24時間換気システムの設置が推奨されており、常に室内の空気を循環させることで、有害物質の濃度を低減します。

3. 安全な建材の選択:シックハウス症候群の原因となる有害物質を含む建材を避け、安全な材料を使用することも対策の一つです。建材には、ホルムアルデヒド放散量を等級で示した「F☆☆☆☆(エフフォースター)」などの基準があり、これらの基準に適合した製品を選ぶことで、室内空気の安全性を確保します。

シックハウス対策の歴史と起源

シックハウス症候群の問題は、1970年代以降に住宅の高気密・高断熱化が進む中で顕在化しました。省エネルギーの観点から、建物の気密性を高めることで室内の温度管理が容易になりましたが、一方で換気が不足し、室内に化学物質が蓄積されるという問題が発生しました。これにより、目の痛みや頭痛、アレルギー症状などの健康被害が報告されるようになり、「シックハウス症候群」と呼ばれるようになりました。

日本では、1990年代後半からシックハウス症候群の認知が広がり、国民の関心が高まりました。その結果、2003年に建築基準法が改正され、住宅におけるホルムアルデヒドの使用制限や、24時間換気設備の設置が義務付けられました。また、JIS(日本工業規格)やJAS(日本農林規格)で建材のホルムアルデヒド放散量の基準が設定され、シックハウス対策が法的にも整備されました。

現在のシックハウス対策の使われ方

現在では、シックハウス対策は住宅や商業施設、公共施設などの建築物において標準的に行われています。建築基準法や関連規格に基づき、建材の選定や換気システムの設計が行われ、室内空気の安全性と快適性が確保されています。以下に、具体的なシックハウス対策の使われ方を説明します。

1. 建材の選定

シックハウス対策では、ホルムアルデヒドなどの有害物質の放散が少ない建材を選定します。日本の建材には、ホルムアルデヒドの放散量を示す「F☆☆☆☆(エフフォースター)」などの等級があり、特に「F☆☆☆☆」は最も放散量が少ないため、安全な建材とされています。これらの建材を使用することで、室内空気の質を維持し、健康被害を防止します。

2. 24時間換気システムの導入

建築基準法の改正により、新築住宅には24時間換気システムの設置が義務付けられています。このシステムは、室内に新鮮な外気を取り入れるとともに、汚染された空気を排出し続ける仕組みです。常に空気を循環させることで、有害物質の濃度を低く保ち、シックハウス症候群のリスクを軽減します。

3. 室内空気質の測定

シックハウス対策では、室内空気の質を測定することも重要です。ホルムアルデヒド濃度やVOC(揮発性有機化合物)の濃度を測定することで、室内環境の安全性を確認し、必要に応じて換気や建材の見直しを行います。定期的な測定により、長期間にわたって安全な住環境を維持できます。

シックハウス対策の未来

シックハウス対策は、今後も住環境の安全性を確保するために欠かせない取り組みであり続けるでしょう。特に、住宅の高気密化・高断熱化が進む中で、室内空気質の管理はますます重要になります。今後の技術革新により、さらなる低ホルムアルデヒド建材の開発や、空気清浄機能を備えた換気システムの普及が期待されます。

また、近年では、シックハウス症候群の原因となる化学物質だけでなく、カビやダニ、花粉などのアレルゲンに対する対策も重視されています。これらの要因を包括的に管理することで、より健康的で快適な住環境の実現を目指す取り組みが広がっています。

結論として、シックハウス対策は建築における健康で安全な住環境を確保するための重要な施策です。歴史的な背景から法的規制が整備され、現在では建築業界において標準的な対策となっています。今後も技術の進歩とともに、さらなる空気質の向上が期待されます。



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