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建築におけるオーバーハングとは?

オーバーハング(ふりがな: おーばーはんぐ、英語: Overhang、仏語: Surplomb)は、建物の上部構造が下部よりも外側に張り出している状態を指します。軒の出(屋根の張り出し)やバルコニー、キャントilever構造による床の張り出しなどがオーバーハングの例です。建築においてオーバーハングは、日除けや雨除けの機能を持つだけでなく、デザイン的なアクセントや空間利用の効率化のために利用されます。

オーバーハングの基本的な役割

オーバーハングの主な役割は、建物の外壁や窓を保護し、日差しや雨から内部を守ることです。特に、屋根のオーバーハング(軒の出)は、夏場の日差しを遮る一方で、冬場には低い位置から入射する太陽光を取り込みやすくし、建物の断熱・保温効果を高めます。これにより、室内の快適性を向上させるとともに、省エネルギーにも寄与します。

また、オーバーハングは建物のデザインを強調するための要素としても重要です。建物のファサードに変化を与えることで、立体感や個性を演出します。例えば、上階が下階よりも大きく張り出したデザインは、空間を有効に活用し、建物全体に動きやダイナミズムを与える効果があります。さらに、張り出した部分にバルコニーや屋外スペースを設けることで、限られた敷地を有効に活用することが可能です。

オーバーハングの歴史と起源

オーバーハングの歴史は、古代建築にまで遡ります。古代ギリシャやローマの建築では、屋根の軒を長く張り出すことで、強い日差しや雨から建物を守る手法が使われていました。特に、南ヨーロッパの温暖な気候では、日除けとしてのオーバーハングが重要な役割を果たしていました。

中世ヨーロッパでは、木造の家屋で2階部分を張り出す「出窓」や「張り出し部屋」が多く見られました。これにより、下階の空間を確保しつつ、上階の居住スペースを広げることができ、狭い都市空間の中で効率的に建物を設計する工夫が見られました。日本の伝統建築でも、寺院や茶室などで軒の出を長く取ることで、雨や日差しから建物を守り、内部の湿気を調整する手法が取り入れられています。

近代建築においては、鉄筋コンクリートや鉄骨構造の普及により、より大胆なオーバーハングが可能となりました。特に、モダニズム建築では、水平線を強調するために長い屋根のオーバーハングを採用したり、上階のキャントilever構造を利用して大胆に張り出したデザインを採用する建物が増えました。こうしたデザインは、建築物の機能性だけでなく、造形美を追求するための手法としても注目されてきました。

現在のオーバーハングの使われ方

現代の建築では、オーバーハングはさまざまな目的で活用されています。住宅から商業施設、高層ビルまで、建物の用途に応じてオーバーハングの設計が工夫されています。

1. 住宅建築におけるオーバーハング

住宅建築では、オーバーハングは軒の出やバルコニーの形で取り入れられています。特に、パッシブデザインに基づいた住宅では、オーバーハングを利用して季節ごとの太陽光をコントロールし、冷暖房効率を高めています。また、都市部の住宅では、狭い敷地を最大限に活用するために、2階部分を張り出す設計がよく見られます。これにより、プライバシーを確保しながらも居住空間を広げることが可能です。

2. 商業建築におけるオーバーハング

商業建築では、オーバーハングはエントランスや屋外スペースの演出に利用されます。建物の入口に屋根を張り出すことで、来訪者を雨や日差しから守り、快適なアプローチ空間を作り出します。また、カフェやレストランのテラス席にオーバーハングを設けることで、屋外の魅力的なスペースを提供しつつ、天候に左右されない快適な環境を実現しています。

3. 高層建築とオーバーハング

高層建築では、オーバーハングは建物の外観デザインや機能性の向上に貢献します。上階の張り出し部分にバルコニーや庭園を設けることで、都市部においても緑豊かな空間を提供できます。また、ビル全体に長い庇を設けることで、日射を調整し、室内の温度を適切に保つための役割も果たします。

オーバーハングの未来と課題

オーバーハングは、建物の機能性を高め、デザインにアクセントを加える要素として、今後も建築設計において重要な位置を占めるでしょう。特に、持続可能な建築やエコデザインの観点から、日射のコントロールや自然エネルギーの活用におけるオーバーハングの効果が再評価されています。

一方で、オーバーハングを設計・施工する際には、構造的な安定性や耐久性に対する注意が必要です。特に、張り出し部分が大きい場合、強風や積雪などの外部環境からの負荷に対して、適切な補強とメンテナンスが求められます。また、オーバーハングによる日陰の効果を最大限に活用するためには、建物の向きや周囲の環境を考慮した設計が重要となります。

結論として、オーバーハングは建築物のデザインと機能性を向上させるための重要な手法です。歴史的には日除けや雨除けとしての役割から始まり、現代では建物の個性やエネルギー効率の向上に活用されています。今後も多様なデザインと技術の進化により、建築におけるオーバーハングの可能性は広がり続けるでしょう。



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